お役立ちコラム

災害時に通信が止まる本当の理由|法人・自治体が見直すべき通信BCPの盲点

結論:通信BCPは「ある」だけでは意味がない

“実際に災害時につながる通信手段”を持っていなければ、BCPは機能していません。

多くの法人・自治体がBCP(事業継続計画)を策定しています。
しかし、その中身を冷静に見ると、通信に関しては極めて楽観的な前提に立っているケースが少なくありません。

たとえば、

  • 携帯電話が使える前提
  • インターネットが復旧すれば業務再開できる前提
  • 本庁舎・本社に人が集まれる前提

災害時、これらはまとめて崩れます。


なぜ「通信」が最初に止まり、最後まで戻らないのか

多くの組織が見落としているのが、
携帯電話・インターネット・Wi-Fiは、すべて同じインフラに依存しているという事実です。

見た目は別々の通信手段でも、

  • 電力
  • 通信ビル・データセンター
  • 基地局・中継設備

このうちどこか一つが止まれば、すべてが同時に機能不全に陥ります。

災害時に
「なぜ全部つながらなくなったのか」
という問いの答えは、構造的に決まっているのです。

災害時に通信が止まる理由は、
「回線が弱いから」「一時的なトラブルだから」ではありません。

そもそも、地上通信はすべて同じインフラに依存している。
これが、通信BCPにおける最大の盲点です。


通信は「最後に復旧するインフラ」である

災害時のインフラ復旧は、一般的に次の順で進みます。

  1. 人命救助
  2. 電力
  3. 水道・道路
  4. 通信(しかも一部のみ)

通信は、意外なほど後回しにされます。
さらに厄介なのは、通信は「一部だけ復旧する」という点です。

  • 電話はつながらないが、データ通信は不安定
  • 市街地は回復しても、沿岸部・山間部は圏外
  • 一見つながっているが、輻輳で実用不可

この状態で何が起きるか。

「組織として、外部と連絡が取れない」

これが、災害時における最も致命的な状態です。


実際に起きている“通信BCPの失敗例”

災害時の通信断絶は、突然起きるわけではありません。

多くの場合、
「最初はつながっていたが、徐々に使えなくなる」
という形で進行します。

この段階で代替手段がなければ、
組織は“連絡が取れない状態”に陥ります。

ケース1:本社と現場が完全に分断

  • 本社:通信OK
  • 現場(工場・港・建設現場):圏外

→ 指示が出せず、判断が止まる

ケース2:自治体内の連絡がLINE依存

  • 庁内はWi-Fi前提
  • 停電+回線断で全滅

→ 職員間の情報共有ができない

ケース3:非常用手段が「名ばかり」

  • 衛星電話は1台のみ
  • 充電切れ/操作できる人が不在

実質使えない

BCPは「書類」ではなく「運用」です。


法人・自治体が最低限備えるべき通信の考え方

通信BCPの基本は、
「異なる仕組みの通信手段を重ねること」です。

  • 地上インフラに依存する通信
  • それとは完全に独立した衛星通信

この二層構造を持つことで、
災害規模に左右されない連絡手段を確保できます。

通信手段は、
「複数」「異なる仕組み」で持つ必要があります。

なぜなら、

  • 同じ仕組みは同時に壊れる
  • 携帯・光回線・Wi-Fiは同一インフラ依存
  • 衛星通信だけが“地上インフラ非依存”

だからです。

つまり、

  • 地上系通信(携帯・固定)
  • 衛星系通信(音声/データ)

この二層構造が最低ラインとなります。


衛星通信がBCPで評価される本当の理由

法人・自治体が衛星通信を導入する理由は、
「珍しいから」「最新だから」ではありません。

評価されるのは、次の点です。

  • 災害規模に関係なく使える
  • 他組織と通信を確保できる
  • 指揮命令系統を維持できる
  • 対外説明(監督官庁・取引先)に耐える

特に法人では、

「なぜ通信手段を確保していなかったのか」

この問いに説明できるかどうかが、
災害後の信用を大きく左右します。


よくある誤解:「Starlinkがあれば十分?」

衛星通信は、「どちらかを選ぶもの」ではありません。

  • 緊急時の即時連絡:衛星電話
  • 業務継続の通信:衛星インターネット

役割を分けて設計することで、
通信BCPは初めて現実的に機能します。

正直に言います。
Starlinkは優秀ですが、万能ではありません。

  • 電源が必要
  • 設置場所に制約がある
  • 悪天候・遮蔽物の影響を受ける

だからこそ、

  • 衛星電話(音声・SMS)
  • Starlink(データ通信)

この役割分担が重要になります。


では、何台・どこに・どう配置すべきか?

ここでは、組織ごとに答えが違います。

  • 人数
  • 拠点数
  • 現場の有無
  • 災害リスク(地震・水害・孤立)

テンプレ回答は存在しません。

だから多くの組織が、
「分かっているけど決めきれない」
状態で止まっています。


失敗しないために必要なのは「機器選定」ではない

最後に、最も重要な話をします。

通信BCPで失敗する原因の多くは、

  • 機器の性能
  • 価格
  • スペック比較

ではありません。

失敗するのは、

  • 運用を考えずに導入した
  • 実際の災害シナリオを想定していない
  • 誰が・いつ・どう使うか決めていない

この3点です。


通信BCPは「導入前の設計」で8割決まる

もし、

  • 自社・自組織のBCP通信に不安がある
  • 衛星通信を検討しているが決めきれない
  • 今の対策が十分か第三者視点で見てほしい

そう感じているなら、
一度、現状整理だけでも行うべきです。


お問い合わせについて

当社では、
法人・自治体向けに「通信BCPの整理・設計相談」を行っています。

  • 売り込み前提の相談ではありません
  • 現在の構成を客観的に整理
  • 必要・不要をはっきりお伝えします

もし、
左側の項目に1つでも当てはまるなら、
今の通信BCPは「機能しない可能性」を抱えています。

逆に、右側をすべて満たすには、
第三者視点での整理と設計が不可欠です。導入する・しないを決める前に、
判断材料を揃えるための相談としてご利用ください。

    必須ご利用区分

    任意会社名(団体名)

    必須お名前

    必須メールアドレス

    任意電話番号

    必須ご相談内容

    任意ご相談内容(詳細)



    関連情報


    【2025年最新版】遊漁船の通信義務化で必要な「衛星電話」いつから必要?いくらかかる?遊漁船向け衛星電話の全知識

    1. 衛星電話が必要になった理由とは? 1.1 なぜ今、遊漁船に衛星電話が義務化されたのか 結論:安全確保のため、衛星電話の設置が一部の遊漁船に義務化されました。 理由や根拠: 近年、携帯電話の電波が届かない沖合での事故や遭難が増加 令和4年に発生した遊漁船の事故では、通信手段の欠如が救助の遅れに繋がった事例も 国土交通省の資料によると、過去5年間で遊漁船による海難事故は年間約100件発生(出典:海難審判所年報) 実例: 2022年、北海道沖での遊漁船遭難事故では、衛星通信機器が未搭載で救助が遅れ、複数の ...

    衛星電話の概要とその重要性を説明する図。衛星を介した通信プロセス、災害時の役割、日本の主要キャリア、料金体系を示し、携帯電話との違いや遠隔地での使用法を強調。
    遠隔地での必需品!衛星電話の仕組みと役割を5つのポイントで解説

    衛星電話の基本的な仕組み 通信方法と技術 衛星電話は、地上の電波塔ではなく、宇宙の人工衛星を利用し通信している。 地上の電波塔に依存しないため、遠隔地や災害時でも通信可能。通常の携帯電話は地上の電波塔の範囲内でのみ機能するが、衛星電話は直進性の電波を使い、広範囲をカバーできるため、山間部や海上での通信、災害時の救助活動などで活躍している。 衛星電話は通常の携帯電話が届かない場所でも利用できる貴重な通信手段です。 衛星電話と地上基地局の役割 衛星電話は地上基地局と連携して機能している。 地上基地局は衛星との ...

    【2025年10月値上げ】KDDI衛星電話が月額最大3,000円アップ!9月末までの乗換で年間36,000円節約

    はじめに 2025年10月1日より、KDDI衛星電話の月額料金が最大3,000円値上げされます。特にInmarsat(IsatPhone)をご利用中の方は、年間で最大36,000円の負担増となる可能性があります。 衛星電話は、災害時や船舶での通信確保、BCP(事業継続計画)対策など、「最後の通信手段」として不可欠な装備です。しかし今回の料金改定により、長期利用者や複数台運用の企業・船舶事業者にとっては大きなコスト負担となります。 本記事では、 値上げの内容と影響 旧端末(IsatPhone PRO/iri ...

    【BCP対策の決定版】Iridium9555衛星電話で“止まらない通信網”を構築する方法|災害・停電に強い企業通信

    ■ 結論|「通信が止まれば、事業も止まる」——だから今、衛星電話がBCPの核心になる 下図のように、地上通信は基地局や電力に依存しており、災害時には容易に途絶します。 一方、衛星通信は独立した宇宙インフラを利用するため、“通信断の影響を受けない唯一の手段”として機能します。 大規模地震・台風・停電・通信障害。あらゆる“想定外”が現実になる中で、企業が最も失いやすいのは「通信手段」です。 どんなに優れたBCP(事業継続計画)を整えていても、通信が途絶えれば、「指示が出せない」「社員を守れない」「復旧が遅れる ...

    【法人向け】Starlink Miniの導入ガイド|BCP・災害対策に最適な衛星インターネットとは?

    はじめに|Starlink Miniとは?どんな場面で使われるのか 結論:Starlink Miniは、災害時や通信圏外でもインターネットを確保できる小型軽量な衛星インターネット端末です。現在、BCP(事業継続計画)・災害対策・建設現場・医療支援など幅広い分野で導入が進んでいます。 理由・根拠: スペースXが運用するStarlinkは、世界で5000基以上の通信衛星を運用(2025年時点) Starlink Miniは、重量約1.1kgで設置も数分、どこでも高速インターネットが利用可能 地上インフラに依存 ...

    停電・断線・基地局ダウンでも必ずつながるIridium9555が“現場責任者の標準装備”になる理由

    【結論】Iridium9555は「どんな状況でも繋がる」唯一の保険です 災害・停電・断線が発生した瞬間に、最初に失われるのは“地上系の通信手段”です。 スマホ(基地局が止まれば即アウト) 光回線(断線すると完全に終了) IP電話(電源喪失で停止) つまり、企業の主要な連絡手段は“一気に沈黙する”のです。 その中で唯一生き残るのが【衛星を直接つかむIridium通信】です。 下の図のとおり、地上網がすべて落ちても衛星通信だけは影響を受けません。「本社⇔支店」「現場⇔本部」の連絡線を、1台で維持できるのが最大 ...

    • この記事を書いた人

    防災アドバイザー

    防災アドバイザー。衛星携帯電話や防災用品の販売・コンサルティングに携わりながら、企業・自治体の災害対策を支援。現場に根ざした視点で「本当に使える防災情報」を発信しています。

    -お役立ちコラム