お役立ちコラム

自治体・医療・福祉施設のための衛星電話BCP対策ガイド│停電・通信断でも止まらない体制へ

はじめに ― 通信は“最後まで残すべき機能”

大規模災害時、最初に混乱するのは交通ではありません。
通信です。

地震、台風、豪雨災害の発生直後、携帯回線の輻輳(アクセス集中)、停電による基地局停止、光回線の断線などが同時多発的に起こります。

平時には問題なく機能していた通信インフラが、数時間、場合によっては数日にわたり不安定になるケースもあります。

自治体、病院、高齢者施設にとって、通信は単なる連絡手段ではありません。
それは「指示系統」「患者対応」「家族対応」「行政連携」を支える基盤です。

BCP(事業継続計画)において、電源対策や備蓄対策は進んでいても、通信の冗長化まで十分に検討されている施設は多くありません。

本記事では、災害時に実際に起こり得る通信障害の構造と、自治体・医療・福祉施設における衛星電話の位置付けについて整理します。


災害時に発生する通信障害の構造

災害時の通信停止には、主に次の要因があります。

  1. 停電による基地局停止
  2. 回線集中による輻輳
  3. 光ファイバーの断線
  4. 交換局・中継局の障害

携帯電話は地上の基地局を経由して通信を行います。
基地局が停電すれば、バッテリーが尽きた段階で通信は停止します。

また、災害発生直後は通話・データ通信が集中し、ネットワークが制限モードに入ることがあります。
これはインフラを守るための措置ですが、結果的に「つながらない」状態を生みます。

固定回線も同様に、物理的な断線や停電の影響を受けます。

つまり、地上インフラに依存する通信は、広域災害に対して脆弱性を持っています。


医療・福祉・自治体で発生する具体的リスク

通信が途絶した場合、施設運営にどのような影響が出るのでしょうか。

自治体の場合

・災害対策本部と現場拠点の連絡断
・避難所運営状況の把握遅延
・広域応援要請の遅れ

医療機関の場合

・救急搬送調整の遅延
・医薬品供給の連絡停止
・患者家族への安否連絡不能

高齢者・福祉施設の場合

・入居者家族への説明不能
・行政指示の受信遅延
・スタッフ応援要請の困難化

通信が止まることは、単なる不便ではありません。
意思決定と外部連携が滞ることを意味します。

災害時の混乱は「情報の不足」から拡大します。
通信の確保は、二次被害防止の根幹です。


通信冗長化という考え方

BCPでは「単一障害点(Single Point of Failure)」を避けることが基本原則です。

電源であれば、
・商用電源
・非常用発電機
・蓄電池

と複数のレイヤーを持たせます。

通信も同様に考える必要があります。

・固定回線
・携帯回線
・IP無線
・そして衛星通信

このように階層化することで、いずれかが停止しても機能を維持できます。

衛星電話は、地上インフラを経由せず人工衛星と直接通信します。
そのため、広域停電や基地局障害の影響を受けにくい特性を持ちます。

これは「常時使う通信」というよりも、「最後のレイヤー」としての役割です。


衛星電話の役割と限界

衛星電話の強みは以下の通りです。

・地上インフラに依存しない
・停電時もバッテリーで通話可能
・設置工事不要
・即時音声通話に特化

一方で、限界もあります。

・通信速度は高速ではない
・建物内では電波が入りにくい場合がある
・屋外や窓際での使用が基本

つまり、衛星電話は万能ではありません。

しかし、緊急時に「確実に音声通話ができる手段」としては非常に有効です。

BCPの観点では、“日常的な利便性”よりも“非常時の確実性”が優先されます。


導入台数の考え方

導入を検討する際は、施設規模と役割に応じた配置が重要です。

自治体例

・災害対策本部:1台以上
・主要避難所拠点:各1台
・広域連携担当部署:1台

病院例

・事務局/対策本部
・救急受付
・当直室

福祉施設例

・施設長室
・防災担当部署

すべての部署に配備する必要はありません。
“意思決定の中枢”に確実に届く体制が重要です。


費用対効果の視点

衛星電話の維持費は、回線費用を含め年間数万円〜十数万円程度が一般的です。

一方、通信断による対応遅延が招く影響は、

・訴訟リスク
・信用低下
・監査指摘
・行政評価への影響

と、金額換算が難しい損失を含みます。

費用は「利用頻度」ではなく、「発生確率×影響度」で評価するべきです。

BCP投資は、使わないことが理想です。
しかし、必要なときに機能しない場合の影響は極めて大きい。

衛星電話は、その“最後の備え”として位置付けられます。


まとめ ― 検討は「今」行うべき

災害時、通信は同時多発的に障害を受けます。

自治体、医療機関、福祉施設において、通信断は業務停止と同義です。

衛星電話はすべてを解決するものではありません。
しかし、地上インフラが機能しない状況下で、音声通話を確保できる数少ない手段です。

BCPの見直しを行う際、
電源・備蓄と並び「通信レイヤーの最終防衛線」として検討する価値があります。


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    • この記事を書いた人

    防災アドバイザー

    防災アドバイザー。衛星携帯電話や防災用品の販売・コンサルティングに携わりながら、企業・自治体の災害対策を支援。現場に根ざした視点で「本当に使える防災情報」を発信しています。

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